EBC研究所
要約
原油価格と金価格の両者は一見関係性が見られないように思われますが、実は一定の関係性があります。本記事では、両者の関係について解説します。
原油価格と金価格は、一見関係性が見られないように思われますが、両者の価格には一定の関係性が見られます。本記事では、原油価格と金価格の関係について解説します。
原油価格と金価格の共通点・相関性
原油価格と金価格には、一定の共通点と相関性があります。両者の最大の共通点は、ドル建てで取引する商品であり、世界情勢に影響されて価格が変動する点です。
原油・金の両者には直接的な関係はないものの、世界情勢の変動による価格の上昇・下降の傾向に相関関係が見られました。どちらも世界情勢が不安定な場合に価格が上がり、世界情勢が安定している場合は価格が落ち着きやすくなります。
ドル建て取引は特に影響が大きい要素です。戦争やパンデミックなどによって世界情勢が不安定になると、より安全な資産を求めてドルを売り、金や原油などを購入する傾向があるため、両者の価格が高騰します。
原油価格と金価格は相関性がなくなる要因
従来、原油価格と金価格には相関関係が見られていたものの、2014年以降は両者の関係が弱まりはじめました。また、投資家達の間では、現在の金と原油の関係は、以前のような相関関係ではなく、一方が下がれば、もう一方は上がるという、逆相関関係になっていると指摘する声も少なくありません。
原油価格と金価格は相関性がなくなる要因は以下のようです。
イランの経済制裁解除：イランは核兵器製造の疑いによって、2006年12月から経済制裁を受けていましたが、国連からの経済制裁が2016年に解除されました。その後、イランは中国向けの輸出を強化しました。しかし、イランの原油供給が拡大したことによって、原油の市場価格が下落しています。
シェールガス・オイルの開発：シェールガス・オイルは、米国で採掘・開発されるエネルギー資源です。埋蔵量が豊富で安定供給が可能なシェールガス・オイルは、石油の強力なライバルとなります。日本のようなエネルギーの輸入に頼っている国でも、シェールガス・オイルのシェアが高まり、石油や原油の価格が急落しています。
OPECによる原油の価格調整：シェールガス・オイルの普及に対抗し、石油の需要を維持するために、OPEC(石油輸出国機構)は原油の価格を大きく引き下げました。このようなことが立て続けに起こったため、2014年の原油価格は急落することになりました。金と原油のこれまでの相関性を考えると、原油価格が下落したため、金価格も下がるはずでした。しかし実際には、金の価格は緩やかに上昇を続けました。
石油需要の減少：シェールガス・オイルやEVといった新しいエネルギーの普及に伴い、世界的には脱石油の動きが活発化しています。また、2020年から広がった新型コロナウイルスによるパンデミックによっても、世界的に経済活動が鈍化し、石油需要が減少しました。ただし、新型コロナウイルスによる石油需要の減少は、翌年には回復しはじめ、現在ではほとんど影響が見られません。
近年、金融市場のグローバル化が進み、株式や日本株しか取引しない個人投資家でも、金や原油などのコモディティの値動きには常に注意を払う必要があります。ただし、目先の価格変動に惑わされないよう、原油価格と金価格の関係などの背景知識を理解することが大切です。
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