公開日: 2025-09-14 更新日: 2025-09-16
リスクオンとは、投資家が「リスクを取ってもリターンを狙える」と判断し、株式や新興国通貨、コモディティなど値動きの大きい資産に資金を振り向ける相場環境を指します。
この背景には景気回復や金融緩和といった安心材料があり、市場心理が前向きになることで、積極的な投資行動が広がっていきます。
リスクオンが起きる背景
リスクオン相場が生まれるのは、投資家が「リスクを取っても利益が期待できる」と考える環境が整ったときです。具体的には、以下のような要因が大きなきっかけとなります。
世界経済の成長期待
世界的に景気が拡大し、消費や投資が活発になると、市場全体が「成長モード」となり、投資家は株式や新興国通貨などのリスク資産を買いやすくなります。
金融緩和や低金利政策
中央銀行が金利を低く維持したり、資金を市場に供給することで、借入コストが下がります。その結果、投資資金がリスク資産に流れやすくなり、株価や通貨の上昇を後押しします。
政治的リスクの後退や安定化
戦争や選挙、不安定な政情などが落ち着くと、投資家心理は改善します。リスク要因が和らぐことで、「リスクオン」に転じやすい環境が整います。
企業業績の改善
企業の利益が安定的に伸びていると、投資家は「将来的に株価も上がる」と考えやすくなります。特に決算シーズンで好調な業績が発表されると、市場全体にリスクオンの流れが広がることがあります。
つまり、リスクオンとは単なる投資家の気分ではなく、経済や政策、政治の安定といった複数の要因が重なって生じる市場のムードと言えます。
リスクオン相場で買われやすい資産
リスクオン相場では、投資家は値動きが大きく、リターンが期待できる資産を積極的に買いに動きます。具体的に注目されやすいのは以下のようなカテゴリーです。
株式(特にグロース株や新興市場株)
株式市場はリスクオン相場の代表的な受け皿です。なかでも、成長性が高いグロース株や、新興市場の株式は買い需要が高まりやすい傾向があります。景気拡大局面では企業収益の拡大期待が強く、株価が大きく上昇することも少なくありません。
高金利通貨(豪ドル、NZドル、新興国通貨など)
為替市場では「キャリートレード」と呼ばれる手法で、高金利通貨が買われやすくなります。投資家は低金利通貨(円やスイスフランなど)で資金を調達し、金利の高い通貨に投資して利ざやを狙うため、リスクオン時には豪ドルやNZドル、新興国通貨に資金が流入しやすいのです。
原油・銅など景気敏感コモディティ
世界経済の成長期待が高まると、エネルギーや資源への需要が増えるため、原油や銅といったコモディティの価格が上昇しやすくなります。これらは「景気の体温計」とも呼ばれ、リスクオン局面では投資家に注目されやすい資産です。
つまり、リスクオン相場では「リスクを取るほどリターンが見込める」と判断される資産に資金が集中し、市場全体に上昇の波が広がる傾向があります。
リスクオンとリスクオフの違い
リスクオンとリスクオフは、投資家心理の両極を表す言葉であり、相場環境を見極めるうえで非常に重要です。
■投資家心理の転換点
リスクオン:市場に安心感が広がり、「多少のリスクを取ってでも収益を狙いたい」という投資行動が優勢になります。
リスクオフ:逆に不安材料が増えると、投資家は「リスクを避け、安全資産を確保しよう」と考え、資金を守る方向に動きます。
■市場ごとの典型的な動き方
株式市場
リスクオン:株価が上昇(特にグロース株や新興市場株に資金が集まる)
リスクオフ:株価が下落(ディフェンシブ株や高配当株にシフトすることも)
FX市場
リスクオン:高金利通貨(豪ドル、NZドル、新興国通貨)が買われやすい
リスクオフ:低金利通貨や安全資産通貨(円、スイスフラン、米ドル)が買われやすい
債券市場
リスクオン:国債などの安全資産は売られ、利回りが上昇しやすい
リスクオフ:国債が買われ、利回りが低下する(「質への逃避」と呼ばれる現象)
■実際の相場例
リスクオンの例:
2020年以降の金融緩和とワクチン普及により、株価や原油が上昇し、投資家が積極的にリスク資産を買いました。
リスクオフの例:
リーマンショック(2008年)や新型コロナのパンデミック初期(2020年初頭)など、不安が急速に高まった局面では株価が急落し、円や米国債に資金が集中しました。
このように、リスクオンとリスクオフは「投資家の心理」と「資金の流れ」を理解するための基本的なキーワードであり、相場の方向性を読む大きな手がかりになります。
リスクオンを活用した投資戦略
リスクオン相場をうまく利用することで、投資の収益機会を大きく広げることができます。ただし、勢いに乗るだけではなく、戦略的に立ち回ることが重要です。
■トレンドフォロー型の戦略
リスクオンの局面では株式や高金利通貨、コモディティが強い上昇トレンドを描きやすくなります。この動きに素直についていく「トレンドフォロー戦略」が有効です。
移動平均線やブレイクアウトのシグナルを利用してエントリーする
ポジションを段階的に積み増して、上昇の波に乗る
ただし、急なリスクオフ転換に備えて損切りラインを設定することが必須
■分散投資とヘッジの必要性
リスクオンだからといって資金を一つの資産に集中させるのは危険です。分散投資を行い、万が一の転換に備える必要があります。
株式、新興国通貨、コモディティなど複数のリスク資産に分散投資する
先物やオプション、債券などを一部組み合わせてヘッジをかける
ポートフォリオ全体でリスク管理を行うことで、想定外の急落にも対応可能
■経済指標・ニュースのチェックポイント
リスクオン相場が続くかどうかを判断するには、日々の経済指標やニュースを確認することが欠かせません。
米国の雇用統計やGDPなど景気関連指標
中央銀行の金融政策(金利、量的緩和など)
政治リスクや地政学リスクに関するニュース
株価指数や為替のテクニカルシグナル
リスクオンを戦略に活かすポイントは、「上昇の波に乗りつつも、リスクオフ転換に備える」ことです。攻めと守りのバランスを取ることで、安定的に利益を狙うことが可能になります。
注意点とリスク管理
リスクオン相場はチャンスが多い一方で、油断すると大きな損失につながる可能性もあります。投資家は「どこでリスクが反転するか」を意識し、冷静に管理することが重要です。
■リスクオンからリスクオフへの転換リスク
リスクオンとは長く続くこともありますが、突発的な事件や経済指標の悪化で一気にリスクオフに切り替わる場合があります。
例:地政学リスク(戦争・テロ)、金融不安、中央銀行の予想外の利上げ
突発的なニュースで相場が急変するため、常に「逃げ道」を確保しておく必要があります。
■過度なレバレッジの危険性
リスクオン環境では価格の上昇が続き、ついレバレッジを高めてしまいがちです。しかし、急な相場反転時には損失が一気に膨らむリスクがあります。
レバレッジは適切に抑える(特にFXや先物取引では注意)
想定外の変動でも証拠金維持率が耐えられるように資金管理を徹底する
「欲張りすぎない」ことが長期的な勝ち残りにつながる
■不確実性が高い局面での対応策
市場の先行きが見通しづらいときには、防御的な姿勢をとることも有効です。
ポジションを小さくして影響を限定する
株式と債券、為替など異なる資産に分散投資してリスクを相殺する
損切りラインやトレーリングストップを活用してリスクをコントロールする
つまり、リスクオン相場では「攻める姿勢」が重要である一方、常に「守りの準備」をしておくことで不測の事態にも冷静に対応でき、長期的に安定した成果を得ることができます。
結論
リスクオンとは、市場に安心感が広がり投資家が積極的にリスク資産へ資金を振り向けるサインです。
相場環境を正しく見極め、状況に応じて戦略を柔軟に調整することで、チャンスを最大限に活かしながらリスクもコントロールできます。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。