アムジェン株価|将来の見通し

2025-09-01

アムジェン(Amgen Inc.)は、米国を拠点とする世界的なバイオ医薬品企業で、がんや腎疾患、炎症性疾患などの治療薬を開発・販売しています。バイオ医薬品業界では研究開発力の高さで知られ、革新的な医薬品の提供により市場で重要な地位を占めています。近年、主力製品の売上や新薬開発の進展によりアムジェン株価への注目が高まっており、投資家からの関心も増しています。


現在のアムジェン株価動向

アムジェンの直近株価

  • 直近のアムジェン株価推移と市場での評価

    アムジェン株価は、直近の取引で287.71ドルとなり、前日比で0.76%の上昇を見せました。この動きは、バイオ医薬品業界全体の安定感を反映しており、投資家の信頼を集めています。


  • 過去数年間のパフォーマンスの振り返り

    過去1年間でアムジェン株価は約9.17%下落しましたが、5年間では約73%の上昇を記録し、年平均で約11.6%のリターンを達成しています。この長期的な成長は、安定した収益基盤と強力なパイプラインに支えられています。


  • S&P500や業界平均との比較

    アムジェンは、S&P500指数と比較しても堅調なパフォーマンスを示しています。特に、過去20年間の平均年率リターンは8.83%と、業界平均を上回る水準です。また、同業他社と比較しても、安定した成長を見せており、投資家からの注目を集めています。


業績とファンダメンタルズ分析

1.売上高・利益の推移

アムジェンは2024年に売上高334億2.400万ドルを記録し、前年から18.57%の増加を達成しました。


2.研究開発(R&D)への投資状況

アムジェンは2024年に研究開発費用を60億ドルに増加させ、前年から24.67%の増加を示しました。


3.主力製品の売上動向

  • Enbrel(エンブレル): 関節リウマチ治療薬で、2024年第4四半期の売上は33億ドルで前年同期比10%減少しました。

  • Otezla(オテズラ): 乾癬治療薬で、2024年第4四半期の売上は21億ドルで前年同期比3%減少しました。

  • AMJEVITA(アダリムマブ): Humiraのバイオシミラーで、2024年第4四半期の売上は2億9.400万ドルで前年同期比84%増加しました。


4.パイプライン(新薬開発)と今後の期待

アムジェンは以下の新薬候補を開発中です:

  • MariTide: 肥満治療薬で、2024年に第2相試験で最大20%の体重減少を示しました。

  • TEZSPIRE: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬で、2024年7月に米国食品医薬品局(FDA)から画期的治療薬指定を受けました。

  • UPLIZNA: IgG4関連疾患治療薬で、2024年に第3相試験で主要評価項目を達成しました。


外部要因と市場環境

  1. バイオ医薬品市場の成長性

    2024年、世界のバイオ医薬品市場は約4.690億ドルと推定され、2034年には約1兆7.962億ドルに達すると予測されています。 これは年平均成長率(CAGR)14.36%のペースでの拡大を示しており、アムジェンにとっても新たな成長機会を提供しています。


    アムジェンは、がん、心疾患、骨粗鬆症、炎症性疾患、希少疾患などの治療薬を開発・販売しており、これらの分野での需要増加が同社の業績を支えています。


  2. 特許切れリスクやジェネリック医薬品との競合

    アムジェンの主力製品である「Prolia(デノスマブ)」は、2025年2月に米国での特許が切れ、バイオシミラーの登場が予想されます。 これにより、価格競争が激化し、売上への圧力が懸念されています。


    また、アムジェンは「Enbrel(エタネルセプト)」のバイオシミラーである「Amjevita」を市場に投入していますが、Sandoz社からは独占禁止法違反で訴訟を起こされており、法的な対立が続いています。


  3. 米国の医療政策・薬価規制の影響

    米国では、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)により、メディケアでの薬価交渉が進められています。 これにより、アムジェンの製品も対象となり、価格引き下げが求められる可能性があります。


    さらに、2025年にはトランプ大統領の行政命令により、薬価の透明性やアクセス向上が求められる中、アムジェンは価格戦略の見直しを迫られる可能性があります。


  4. グローバル市場における成長機会

    アムジェンは、2024年に日本市場での事業拡大を加速させ、2031年までに12製品の発売と38の適応追加を目指しています。 特に、活動性甲状腺眼症治療薬「Tepezza」や、骨粗鬆症治療薬「Evenity」などが成長を牽引しています。


    また、アムジェンは肥満症治療薬「MariTide」の開発を進めており、GLP-1薬市場が2030年までに1.000億ドルを超えると予測される中、同社の新たな収益源となる可能性があります。


将来の見通し

1.アナリスト予想によるアムジェン株価ターゲット

  • MarketBeatによれば、過去12ヶ月のアナリスト予想の平均株価は $304.43、現在のアムジェン株価(約$287.71)に対し約 5.8% 上昇余地があります。最高は$383、最低は$195です。

  • Zacksでは平均ターゲットが $315.26 で、約 8.9% の上昇余地という見方です。

  • TipRanksでは直近3ヶ月の21人のアナリストによる平均ターゲットは $324.94、上昇余地は 12.9% と高めに評価されています。

  • StockAnalysisによる最新情報では、18名のアナリストのコンセンサス目標は $320.11、上昇余地は +11.3% となっています。


2.成長要因

  • 肥満治療薬「MariTide」

    Amgenは月1回投与のMariTideを開発中で、2025年6月23日に開催されたADA年次学会で第2相試験の新たなデータと薬物動態情報を発表予定でした。


    Barron’sは、GLP-1系の肥満市場は2030年までに$1000億を超える可能性があり、MariTideがその一部を取れば、Amgenの2030年売上高は$460億を超えるとのシナリオを提示し、アムジェン株価が$337を超えて$450に迫る可能性も示唆しています。


  • 製造能力拡充と供給力強化

    2025年第1四半期決算で、Amgenはオハイオ州に$9億のバイオ製造施設を拡張予定であることを明かしました。


    この取り組みは、GLP-1注射薬のような複雑製剤の安定供給体制を整える上で重要と評価されています。


  • 安定した既存製品の収益貢献

    Repathaの売上は前年比+36%、Evenityは+35%と強い伸びを示しました。


    売上増の主力製品や多数の製品が10億ドル以上の販売実績を持つ点が、収益の安定につながっています。


3.リスク要因

  • バイオシミラーや特許切れの競争

    主力製品へのバイオシミラー参入が進むことで、価格圧力や売上減の可能性があります。


  • 規制やサイクル的業界リスク

    医薬品業界特有の規制強化、価格統制、景気変動など外部環境の変化リスクがあります。


  • 新薬開発の不確実性

    MariTideにおいては副作用(吐き気)の報告もあり、他のGLP-1薬と比較した際の耐容性や効果の優位性が問われています。


投資戦略のポイント

  • 中長期での保有戦略

    アムジェンは、既存の主力製品群による安定した収益基盤と、肥満症治療薬「MariTide」など将来性のあるパイプラインを兼ね備えています。短期的には特許切れや薬価規制による影響を受けやすいですが、長期的にはバイオ医薬品市場全体の拡大と新薬の収益貢献が期待できます。そのため、中長期での保有を前提とした投資が適しています。


  • 配当利回りや株主還元の観点

    アムジェンはS&P500採用銘柄の中でも安定的に配当を支払う企業のひとつで、2025年時点の配当利回りはおよそ 3%前後 と堅実です。また、自社株買いなど株主還元策にも積極的であり、安定収入を求める投資家にとって魅力的な選択肢といえます。


  • 分散投資の中でのアムジェンの位置づけ

    アムジェンは、製薬・ヘルスケアセクターにおける大型株であり、景気変動の影響を比較的受けにくいディフェンシブ性を持っています。株式ポートフォリオにおいては、テクノロジーや金融など景気敏感株と組み合わせることで、安定性を補完する役割を果たします。また、同じ肥満治療市場で存在感を持つイーライリリーやノボノルディスクと比較して、株価水準が割安と評価される場面もあり、分散効果を高める一手となり得ます。


結論

アムジェン株は、既存の安定した収益基盤に加え、肥満症治療薬「MariTide」をはじめとする新薬パイプラインによる成長期待が注目されています。アナリスト予想では現在のアムジェン株価から10%前後の上昇余地が示されており、中長期的に投資妙味のある銘柄といえます。


ただし、特許切れやバイオシミラー競争、薬価規制といったリスクも存在するため、成長性とリスクのバランスを見極めつつ、配当や株主還元も考慮した長期保有戦略が有効でしょう。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。